今日取り上げるのは、大阪府高石市で、無戸籍の80代女性が餓死しているのが見つかった事件についてです。
一緒に暮らしていた40代後半とみられる息子は「生活費が底をついた」「自分たちには戸籍がなく、救急車を呼ぶことや市役所への相談はできなかった」と話しているとのこと。
あらゆることがシステマチックに管理されているこの令和の時代に、戸籍がなく病院にも行けずにいる人たちがいるという事実は人々に大きな衝撃を与えています。
事件の概要をまとめると共に、「戸籍がないと本当に行政サービスを利用できないのか?」という点についても見ていきたいと思います。
最後までお付き合いください!
大阪府高石市 無戸籍80代女性餓死事件の概要は?
ABCニュースの報道を元に、事件の概要をまとめます。
2020年9月、大阪府高石市で80歳くらいの女性が自宅で餓死しているのが見つかった。
同居していた40代後半と見られる息子は「生活費が底をついた。自分たちには戸籍がなく、救急車を呼ぶことや市役所への相談はできなかった」と話している。
女性は死亡する前、「宮脇奈々美」と名乗っていて、無戸籍になった経緯はわかっていない。
長崎県の五島列島出身とみられ、戦争孤児の可能性がある。
女性は2016年に内縁の夫を病気で亡くしたあと、夫が残した数百万円を切り崩して、息子との生活費に充てていた。
引用 https://news.yahoo.co.jp/articles/ba1c02f081ddf641427bf6226cbd54e1b957f095
法務省では、2015年7月から無戸籍者の調査を開始していて、2016年2月の時点では日本における無戸籍者は686人、うち成人132人と発表されていました。
しかしこの数字には1歳以下の子供は含まれていないため、実際は「無戸籍」の人は全国で少なくとも1万人はいると言われています。
無戸籍になる要因として、「法的離婚後300日以内に生まれた子どもは前夫の子と推定される」という法律(民法772条)が絡むケースが多いのだとか。
離婚~次の結婚までの間に生まれた子どもが無戸籍状態になるリスクが高いのです。
このような現実に、ネットではこんな声が上がっていました。
(Yahoo!ニュース コメント欄より引用)
恐ろしいことだけど、この年齢まで家族以外と関わっていないのかもしれない。
不思議に思ってしまうけど、充分有り得ることで、世の中にもまだこのような人がいると思うと悲しい。
映画のような話。。
そっちにビックリ!
周りに相談したりする人もいなかったの?
なんか、閉塞した家族間の負のスパイラルが脈々と続いてることが怖い。現代の話とは思えない怖さがある。
現場について
女性の遺体は、大阪府高石市の住宅で発見されました。
無戸籍だと本当に救急車も利用できないの?
今回、亡くなった女性の息子は「戸籍がないから救急車も呼べない」というような発言をしていますが、それは本当なのでしょうか?
専門家の見解を参考にしてみましょう。
藤田孝典氏
NPO法人ほっとプラス理事 聖学院大学心理福祉学部客員准教授
出生届がされていなかったり、死亡届が出されているなど、無戸籍の方も生活相談に来られることがあります。
その際には「就籍」という手続きをおこないます。
就籍をする際には、家庭裁判所へ申請をして許可を得るか、家庭事情などが複雑な場合は、判決を得た後に届出をすることになります。
また、無戸籍者が生活困窮していた場合、戸籍の有無にかかわらず、生活保護制度を受けることは可能です。
生活保護制度は自立助長を制度目的にしているため、身元不明者の戸籍を探したり、就籍手続きを福祉事務所と法律家で連携しておこなう事例もあります。
現在、無戸籍、身元不明の方が行政サービスを全て受けられないということはあり得ませんので、就籍や福祉サービス利用の際は遠慮なく、法律家、福祉専門機関、支援団体などへ相談してみてください。
引用 https://news.yahoo.co.jp/profile/author/fujitatakanori/comments/
この男性が知らなかっただけで、戸籍がなくてもしかるべきサービスはちゃんと受けられるんですね。
しかし、やはり戸籍がないことで受けるデメリットがかなり多いこともまた事実です。
竹内豊氏 (行政書士)
記事によると、お亡くなりになった方は、戦争孤児のために無戸籍になってしまったようですが、その他の原因として、民法772条の「嫡出推定」の規定により、前夫を子の父とすることを避けるために、出生届を出さないケース。
親が子どもを出産しても出生届を出すことまで意識が至らないか意図的に登録を避けるケース等が考えられます。
無戸籍者になると、親族的身分関係やその子が日本人であることを戸籍で証明できない、行政上のサービスを十分受けられない等、社会生活上の不利益を被ってしまいます。
無戸籍でお困りの方は一度法務局にご相談されてはいかがでしょうか。
引用 https://news.yahoo.co.jp/profile/author/takeuchiyutaka/comments/
いずれにしても、まずは法務局に相談すること。
今回の場合は、「相談してみよう」という発想にすらならなかったことが残念でなりません・・・。
亡くなった内縁の夫はそれなりに収入を得ていた人物のようなので一般的な教養もあったはず。
その人物がなぜ戸籍をとることを勧めなかったのか?謎は深まるばかりです。
今後の捜査に注目していきましょう。
まとめ
大阪府高石市で、無戸籍の80代女性が餓死していた事件についてまとめました。
ポイントを整理します。
- 2020年9月、大阪府高石市で80歳くらいの女性が自宅で餓死しているのが見つかった
- 同居していた息子は「自分たちには戸籍がなく、救急車を呼ぶことや市役所への相談はできなかった」と話している
- 戸籍がなくても行政サービスは受けられる。まずは法務局に相談することが大事
戸籍がないということは、自分の存在を社会的に認められていないのと同じことです。
それって、アイデンティティに関わる問題ですよね・・・。
漫画や映画でありそうなストーリーですが、これは現実。
自己肯定感どころか、存在自体を認めてもらえていないのですから、社会に対して複雑な気持ちを抱えて生きてこられたのではないかとお察しします。
改めまして、亡くなった女性のご冥福をお祈り申し上げます。
最後までお読みいただきありがとうございました!