今日取り上げるのは、秋田県由利本荘市で、自宅に母親の遺体を遺棄した疑いで50代の兄弟が逮捕された事件についてです。
発見された遺体は菊池ユキ子さん(78)のもので、同居する菊地進容疑者(53)と、菊地明容疑者(51)が逮捕されました。
警察は年金の詐欺容疑も視野に調べているとのこと。
年金を不正に受給するために半年以上も遺体を自宅に置いておくとは、正気の沙汰とは思えない事件ですね。
事件の概要をまとめると共に、年金不正受給の実態についても見ていきますので最後までお付き合いください。
秋田県由利本荘市 母親遺体遺棄事件の概要は?
事件について報じた岩手放送の報道内容を元に、概要をまとめます。
- 2020年8月26日、秋田県由利本荘市で、市の地域包括支援センターから警察に「去年の12月以降、菊池ユキ子さんと連絡が取れない」と連絡があった
- 警察官が自宅を訪ねたところ寝室で女性の遺体を発見した
- 遺体はユキ子さんのものとみられ、遺体を遺棄した疑いで同居する長男・菊地進容疑者(53)と、次男・菊地明容疑者(51)が逮捕された
- 2人は容疑を認めていて、警察は、年金の詐欺容疑も視野に調べている
引用 https://news.yahoo.co.jp/articles/1c5e6824425edb707a1d0b0196ba15060a7e376c
参考動画はコチラ↓↓
続いて、容疑者についての情報です。
容疑者①(長男)
名前 菊地進
年齢 53歳
職業 無職
Facebook 同姓同名のアカウントは多数ありますが、本人と特定できるものはありませんでした。
容疑者②(次男)
名前 菊地明
年齢 51歳
職業 会社員
Facebook 同姓同名のアカウントは多数ありますが、本人と特定できるものはありませんでした。
テレビの映像を見ると、付近はのどかな田園風景。
隣家との間隔も離れているようなので、近所の方も異常に気づかなかったのでしょうか。
地方ほど近所の付き合いは密だったりするものだと思いますが、このエリアではそういった親交があまりなかったのかもしれません。
あるいは、兄弟が「母親は具体が悪くて寝ている」とでも言ってごまかしていたのかもしれませんね。
母親の死を隠して年金を受給し続けるとは、なんとも親不孝な犯行に思えてなりません。
先日紹介した7040(8050)問題の果てにはこんな事件があるのかもしれない・・・と思うと、子を持つ親としてはいたたまれない気持ちになります。
愛知県豊橋市の住宅で男女3人の遺体が発見。目立った外傷なく、心中の可能性も?背景にあるのは7040問題か。その支援策はどうなってるの?
ネットでも、その親不孝を「信じられない」と嘆く声が上がっていました。(Yahoo!ニュース コメント欄から引用)
二人共に心が折れるもなのだろうか・・・
家もあるから、ただ、食うだけ稼げばいいのにと思う。
問われる罪は?
今回、両容疑者は「死体遺棄」の容疑で逮捕されています。
(死体損壊等)
第百九十条 死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。(引用元:刑法190条)
また、年金を不正に受給していた「詐欺」の容疑も視野に入れて捜査が進められています。
(詐欺)
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。(引用元:刑法246条)
事件現場について
遺体は、秋田県由利本荘市雪車町の住宅で発見されました。
目的は年金の不正受給?制度上に問題はないのか。
今回、容疑者となった兄弟は半年以上もユキ子さんの死を隠して年金を受給していたと見られているわけですが、制度的にそんなことが可能なのでしょうか。
死亡届が出されていなかったとしても、その方が生存しているかどうかを確認するようなシステムくらいはあるはずです。
調べてみたところ、年金を受け取るには、毎年「年金受給権者現況届」(現況届)というものを提出する必要があります。
年金を受けている方が、年金を引き続き受け取るためには、日本年金機構より送付される「年金受給権者現況届」(現況届)を毎年受給者ご本人の誕生月の末日までに、日本年金機構に提出していただく必要があります。
ただし、住民基本台帳ネットワークシステムによりご健在を確認できる場合は、日本年金機構より現況届が送付されず届出は省略できます。
引用 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/kyotsu/jukyu/20140421-11.html
ユキ子さんの誕生日が8月~12月の間であるとしたら、まだ今年の分の現況届を出す段階ではなかったのでしょう。
仮に、現況届の提出を求める手紙が届いていたとしても、兄弟が本人に代わって書類を偽装返信してしまったのかもしれません。
今の制度では、そういったことが容易にできてしまう。
そこが年金の大きな問題点とも言えますし、実際にその点を指摘している専門家もいます。
- 戸籍にせよ住民票にせよ、現在は届け出主義(本人側からの届け出により処理される)なので、例えば死亡したのに死亡届が出されなかったら、ずっと生きたままの扱いとなる
- 現状では原則として本人側の届け出を待つしかなく、不正の意図がある場合は今後も困難かもしれない
- 住基ネットを使った場合・・・死亡届が出ていないと年金は支給される仕組み
- 現況届を出す旧来の形・・・郵送されてきた現況届が本人の筆跡か本人の印鑑なのかなどは調べないので、偽装するのも簡単
引用 http://www.fps-net.com/nenkin/nenkin_96.html
実際、こちらの資料にもあるように、年間に2万人を超える高齢者(70代以上)が「行方不明」となっています。
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引用 https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/fumei/H30yukuehumeisha_zuhyou.pdf
認知症で行方知れずになっている方もいますし、その家族が事実を隠して年金を受給し続けているというケースも考えられますよね。
極端に言えば、年金を受給しているお宅を一軒一軒訪問して確認するくらいのことをやらなければ、完全には不正を防げないということです。
コストの面などからそれは難しいにしても、今後、何らかのチェック体制の強化は必要でしょう。
そういったプレッシャーがないと、同じような事件は必ずまた起きてしまいます。
まとめ
以上、秋田県由利本荘市で起きた女性の遺体遺棄事件についてまとめました。
ポイントを整理します。
- 秋田県由利本荘市で、50代の兄弟が70代の母親の遺体を遺棄し、約半年にわたって不正に年金を受給していた疑いが持たれている
- 逮捕されたのは、菊地進容疑者と菊地明容疑者
- 年金の不正受給はかねてより問題になっており、そこには本人の生存を確実に確認するのが難しいという制度上の弱点もある
今のところ「遺体遺棄」と「年金の詐欺容疑」で捜査が進められていますが、ユキ子さんの死因なども気になりますよね。
そこに事件性はなかったのか?
今後の調べに注目していきたいと思います。
改めまして、亡くなったユキ子さんのご冥福をお祈り申し上げます。
ここまでお読みいただきありがとうございました!